スペインの機能素材ブランド 「SOSA」×「Disfrutar」世界一のレストランの創造を形にする舞台裏
ヴァローナ セレクションのひとつである、スペインの機能素材ブランド「SOSA(ソーサ)」と、ミシュラン3つ星、2024年 ワールドベスト50レストランで1位を獲得したスペイン・バルセロナのレストラン「Disfrutar(ディスフルタール)」がコラボレーションするディナーイベントを、3月12-13日、東京・市ヶ谷のスペイン料理店 「Tinc Gana(ティンガナ)」で開催しました。本イベントではソーサが世界のトップシェフとともに開発する最先端のガストロノミー技術の革新的なプレゼンテーションを披露し、日本に拠点をおく実力派の料理人やパティシエに、エル・ブジ時代から続く、ガストロノミーの進化を体験いただきました。
腕を振るったのは、ディスフルタールをオープンした3人のシェフのひとりであるオリオール・カストロ氏が率いるチームと、ソーサ本社のエデュアルド・アフアサ シェフです。ソーサは、1967年にスペイン・カタルーニャで創業し、2000年より料理革命を起こしたカタルーニャの3つ星レストラン、エル・ブジ(2011年閉店)の フェラン・アドリア氏の意見を元に、現在ではソーサのメインカテゴリーになっている、テクスチャー製品の開発を本格化しました。以来、世界80カ国以上で料理や製菓のプロフェッショナルのニーズと探求心を満たす高品質な機能素材を生み出しています。
ディスフルタール:カタルーニャの自然と文化に根ざした革新的な調理技術
オリオールシェフは、料理の物理的・化学的プロセスを分析し活用する調理技術として知られる「分子ガストロノミー」という呼び名に対して、「あまり好きではありません」と語ります。彼の手がけるディスフルタールの料理は、カタルーニャの自然と文化を抜きにしては語れないという強い信念に基づいています。
オリオールシェフは、素材の持つ機能と向き合い、時にエキセントリックで自然や歴史的文化からかけ離れた存在とされる調理技術が、カタルーニャの街、文化、生産業、企業、そしてアカデミックな研究と決して切り離せないものであると主張します。地域の文脈を理解せずして、技術は本当の意味で活かされないのです。オリオールシェフにとって、調理技術は創意を尽くす研究であると同時に、自然からの賜りものです。そのため、彼は調理の知識や技術を世界中の料理人たちの共有財産であると考えています。
プレゼンテーション
オリオールシェフのオリジナリティあふれるクリエイションを、調理技術ごとに動画で紹介した後、デモンストレーション形式で展開しました。そして、ソーサ製品の多彩な活用法を交えながら、来場者の目の前で仕上げました。
「トリュフ・ピザ Truffe Pizza 」(左):SOSA イヌリン HOTを使用した油を使わないパイ生地
チコリ由来の食物繊維から生まれた、油脂分の代替としてクリーミーな食感を与えることができる「イヌリン HOT」を使ってリッチな食感と甘味を加えた小麦もバターも使わないパイ生地。2001年オリオールシェフが来日した時に出会ったというオブラートに、生クリームとイヌリン HOTで作ったクリームを刷毛で塗り8~9層に重ね、冷蔵庫で7時間冷やしてオーブンで焼成すると、非常にもろい食感の生地ができあがります。小麦粉を使わずにパイ生地のようなもろい食感の層を生み出します。
「トマトのポルヴォロン&キャビア Tomato Polvoron with Arbequina Caviaroli」(右):SOSA マルトセックを使用したほどける新食感の伝統菓子
タピオカ由来のマルトデキストリン「マルトセック」を使った新しい食感の伝統菓子。油を吸収する性質と、強い結着力をつけて固形化する機能を有するマルトセックですが、本クリエイションでは油を吸収する性質を活用し、トマトパウダー、油を合わせてこねたら、ペーパーに挟んで伸ばし、丸型で抜いてトマトパウダーをまぶします。スペインを代表するオリーブの品種、アルベキーナのオリーブオイルで作られたキャビアをのせて提供しました。「この食感の儚さを味わうには、一口で食べずに三口で楽しんでほしい」とシェフからコメントがありました。このほか、オリーブオイルを加え、クランブル状になったものをフライパンで温めてサラダやドルチェのトッピングとして提供するアイデアも披露しました。
「クリスピーな卵黄 黒トランペットダケのホットゼラチン Crispy Egg Yolk with Hot Mushroom Gelatin」:SOSA アガーアガーを使用した温かいゼラチン
ゼラチンの植物性代替素材であり、寒天特有のもろい食感が特徴の植物性ゲル化剤製剤「アガーアガー」を使い、温かい状態でゼラチンのような食感を作ります。黒トランペットダケの煮汁に調味料、アガーアガーを混ぜ、沸騰させ、卵の殻のコックに流して固め、酵母、水、プロクランチ(※)塩、砂糖、小麦粉などを混ぜて冷蔵庫で発酵させ、天ぷら用の生地を作り、小麦粉をまぶした卵黄を包んで揚げます。上にのせた天ぷらを半分食べたら、中の卵黄をソースとして下のジュレに注ぎ、スプーンですくって食べます。 ※プロクランチ:サクサクした食感を作る商材(日本未導入のソーサ製品)
「トウモロコシとフォアグラの多球状タルト Corn Multiesferification Whit Foie」(左):SOSA ジェルエスペッサ、フラックスファイバーを使用し、液体をゼリー状の膜に包まれた球体に、そして連結
本クリエイションに活用されているスフェリフィケーションとは、アルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウムを反応させ、ソースなどの液体をキャビアのようなゼリー状の膜で包んだ球体にするテクニックです。2004年に開発されたこの技術は、2017年にはゼリー状の球体を、通常は洗って油の中で保存するところを、洗わずに長方形のシリコン型で保存すると、粒同士が結着することを発見(※加熱不要であらゆる温度帯でとろみをつけることができる「ジェルエスペッサ」、亜麻の種子由来で増粘性、安定性、乳化、形状保持など多機能な「フラックスファイバー」を使用して中の液体を増粘させておく必要があります)。これによりトウモロコシや真珠の首飾りのようなデザインが可能になりました。
「大地から出現するビーツ The Beetroot that Emerges from the Earth」(左): SOSA フラックスファイバー、アルブミナ、ヨーグルトフレーバー・パウダーを使用した味が薄まらないメレンゲ菓子
卵白の水分によって味が薄まることなく、フレーバーを加えることのできるメレンゲ。メレンゲの気泡を、粘りすぎず口溶けのよい状態で安定させる亜麻の種子を配合した「フラックスファイバー」と、水分と合わせるだけで卵白よりも優れた起泡性をもたせることができる乾燥卵たんぱく「アルブミナ」を合わせ、そこにビーツの果汁を加えて冷蔵します。そこからメレンゲを作って乾燥して「ヨーグルトフレーバー・パウダー」をまぶします。メレンゲを器に入れ、黒ゴマで隠し、テーブルの上で器を勢いよく回転させ、目の前でメレンゲを出現させる、大地からビーツが現れるイメージのプレゼンテーションを行いました。
そのほかの提供メニュー(左上から時計回り)「Canapé with Smoked Butter」「Chinese Bread with Caviar and Sour Cream」「Crispy Black Trumpet Mushroom Leaf」「Savoury Candy of Pecans with Mango, Tonka Bean, and Whiskey」(右)
創造性を引き出すアプローチ:トップレストランの革新の舞台裏にソーサあり
ディスフルタールは、料理の世界に新たな風を吹き込んでいます。メニュー表の代わりに提供されるのは、「ナラティブ(物語)」「コンセプト(概念)」表です。このユニークな試みは、料理の背後にある情熱を感じ取っていただくためのツールとして機能します。お客様は、表を見ながら料理の背景にある様々な物語を感じ取ることができます。描かれた補助線は、経験、思い出、イノベーション、遊び、感情、技術、価値観など、目に見えぬものを見出すトレーニングを重ねることで、創造性を高めることができるといいます。最後にオリオールシェフは、「ソーサとの探求は単なる食材の補助にとどまらず、シェフの創造力を解き放つ鍵となります。その先に広がる未知の味わいが、私たちの食体験を進化させ、これからの食の世界をさらに豊かにしていくに違いありません」と締めくくりました。ソーサは、今後もガストロノミーの革新を追求し、世界中の料理人やパティシエとともに新しい食の体験を創造し続けます。