2/22/24に発行

ヴァローナ ✖ 東京藝術大学「まだ見ぬ特別なチョコレート体験(物語)」

 

ヴァローナは、創業100周年を機にこれからの100年を次世代の人と考えるきっかけとなることを願い東京藝術大学とタイアップ。参加学生に「まだ見ぬ特別なチョコレート体験(物語)」をテーマに、創業以来こだわり続けている「最高のチョコレートの創造」と「責任あるスイート・ガストロノミーの世界」を表現してもらいました。

参加学生は、約6か月にわたり 「知る」「体感」「対話」「言語化」などのプロセスを通じて、チョコレートという素材、カカオやカカオ生産者、シェフの世界やスイート・ガストロノミーの世界について学び、体験したことから、独自の視点でとらえたものを、斬新に、クリエイティブに、それぞれの藝術手法で見事に表現。
集大成として、2024年2月6日 (火) 〜 2月17日 (土) の期間限定で、学生たちによる作品が+NARU NIHONBASHIにて展示され、ご来場いただいた皆さまには、各学生がセレクトした自分の作品に一番合うチョコレートを実際に試食しながら、作品を鑑賞していただきました。

この試みを通じて、ショコラの世界、パティシエの世界、スイート・ガストロノミーの世界を、より多くの方に知っていただき、 100年先を見据えたこの世界のあり方を共に考えることができ大変嬉しく思います。
東京藝術大学の皆さま、ご来場いただいた皆様、ご協力いただいた皆様に改めて感謝申し上げます。

 

参加学生メンバー
・政井 歌さん・張 瀅鑫(チョウ エイシン)さん・五十嵐 央さん・源川 眞子さん・小澤 良奈さん・小此木 みなみさん・松下 穂香さん・何 川(ホ チュエン)さん(左上から時計回り)

参加学生メンバーの出展作品はこちら↓

①terroir(グラフィック)
*------------------------------------------------
テロワール。フランス語で地球、大地の意味の言葉。
チョコレートの味はこのテロワールによって変わる。
赤道付近の遠い国々でカカオは作られ、長い時間をかけて私たちの手元に届く。
チョコレート一粒にはそんな長い時間と場所が内在しているのだ。

チョコレート一粒を味わう体験は、自身のテロワールを探すきっかけとなった。

自分にとっての私を形成する価値観や記憶のテロワールを実感するとき、
それは日記に記されていた他者との会話で出た言葉のかけらだった。
日記にある言葉と、日常の記憶の映像から文字を集め日記の言葉を再構成した。

私を構成するテロワール。

政井歌 / UTA MASAI
-------------------------------------------------*

*私の選んだチョコレート*
セレクト:マンジャリ MANJARI 64%
グラン・クリュ(シングルオリジン) マダガスカル産カカオ
華やかな酸味と赤いベリーの風味
理由:作品のテーマにしているカカオのテロワールを一番感じるチョコレート。

 

➁ 密かに踊る、静かに歌う(水彩画)
*------------------------------------------------
宝石の堅固な輝き、
柔らかな川の流れ。
口の中でゆっくりと融ける瞬間、
私が不得意な甘さと深く愛する香りが広がってくる。
硬さと柔らかさ、甘さと香り、
それはすべて小さな結晶たちが密かに踊り、静かに歌っているのだ。

張瀅鑫(チョウ エイシン)/ ZHANG YINGXIN
-------------------------------------------------*

張瀅鑫_1

*私の選んだチョコレート*
セレクト:オパリス OPALYS 34%
ミルクと砂糖を絶妙なバランスで配合したごく控えめな甘さが特徴のホワイト・チョコレート。
理由:ホワイトチョコレートは、カカオバターと砂糖とミルクで作ったもの。カカオマスの味ではなく、カカオバターの食感を特に感じられる。作品で描いた結晶はカカオバターの成分で、結晶の妖精たちはカカオバターの中に住んでいる。オパリスを食べるとき、そのなめらかな口溶けを味わいながら、結晶たちが踊っている姿もいろいろご自由に想像してほしい。
そして、私のペンネームは有理(ゆり)。『オパリス(opal+lilyの造語)』という名と同じ百合の意味があります。あまり甘いものに得意ではない私が控えめな甘さのオパリスに出会い、さらに同じ名前を持っているということには奇妙な縁を感じている。

 

TRADE – カカオはチョコレートにチョコレートは夕陽の写真に – (行為の記録、アートブック)
*------------------------------------------------
手元にある1枚のチョコレート。
これを、ある人は飴と交換してくれた。
ある人は煙草と交換してくれた。
ある人は夕陽の写真と交換してくれた。
このチョコレートは私に届く以前にも、
何度もの交換(TRADE)を繰り返してここにある。
この交換の続きを、私が新しく作ってみる。

五十嵐 央 / HIRO IGARASHI
-------------------------------------------------*

コンセプト
原産地から消費者まで数多くのトレードが行われ、1枚のチョコレートは私の手元にある。
カカオが加工されチョコレートが出来ることは知っているが、どの国のどの農家が育て、誰の手に渡り加工されチョコレートが出来ているのかは知らない。
最も身近な食べ物のひとつであり、最も遠い場所から来た食べ物なのかもしれない。
本作品では、手元に届いたチョコレートを他人と物々交換をし、交換物を記録するという試みをした。私自身もトレードの輪に入り、原産からの地続きの上に乗ることで、味ではないチョコレートの側面を考えることが出来るのではないか。

*私の選んだチョコレート*
セレクト:グアナラ GUANAJA 70%
グラン・クリュ(ブレンド)
力強くもエレガントな苦さの極み、 持続性のある香り
理由:作品がカカオ農家から私たちまでの繋がりを表現している。よりカカオを感じるこのチョコレートがインスピレーションとして合うと感じる。

 

④ チョコと世界が広がる体験(アニメーション)
*------------------------------------------------
幼い頃から抱いてた、変わらない気持ちと変わった私。
気が付けばみんな知っていて。
感じてたもの、甘くて少し苦い。
でもきっとそれだけじゃない。
世界のすべてがちょこっと広がった。

源川 眞子 /  MAKO GENKAWA
-------------------------------------------------*

*私の選んだチョコレート*
セレクト:キダヴォア KIDAVOA 50%
ドゥーブル・フェルマンタシオン(二重発酵) 
フルーティなバナナのアロマに続く、スパイシーな味わいとモルトの香りによるリッチなカカオの苦みが特徴。
理由:甘味も苦味も無理なく楽しめ、追ってくる酸味に刺激を受ける 。香りの広がりと味の複合性がチョコレートの固定観念を覆してくれる。 純粋に、今の私が一番美味しいと感じたチョコレート。

 

⑤ 34.5度 (フォトグラフィー+詩)
*------------------------------------------------
指先で触れて数秒後、体温を伴うかのように、
チョコレートの甘い香りは記憶を助長する。
記憶は温度を含んでいるようで、
眠たげで鮮明に、あの頃を連れてくる。

小澤良奈 / RANA OZAWA
-------------------------------------------------*

小澤良奈_1

*私の選んだチョコレート*
セレクト:グアナラ GUANAJA 70%
グラン・クリュ(ブレンド)
理由:色味が濃いので作品の写真のベースのトーンと近く感じたことと、鼻の奥に感じる甘い香りが、作品のイメージと重なったからです。
私はビターチョコがあまり食べられないので、甘すぎないけどしっかり「甘味」が感じられる、というのが愛しいという感情とリンクするように感じました。

 

⑥とけないままごと (シルクスクリーン)
*------------------------------------------------
溶かして、混ぜて、固めて、取り出して。
5歳の私にとって、バレンタインのチョコ作りは、何もかもめちゃくちゃで、おままごとのようだった。
絵の具にチョコを溶かす、目分量で色々混ぜてみる。
あれ、なんだかあんまり上手く刷れないや。
どこか拙い、私の20年越しのおままごと。

小此木 みなみ / MINAMI OKONOGI
-------------------------------------------------*

*私の選んだチョコレート*
オパリス OPALYS 34%
ミルクと砂糖を絶妙なバランスで配合したごく控えめな甘さが特徴のホワイト・チョコレート。
理由:絵の具に色々な香料を混ぜたことで、制作室が甘い香りでいっぱいになった当時の思い出がよぎりました。

 

⑦ Floating image of cacao (フォトグラフィー)
*------------------------------------------------
私はカカオという実を実際に見たことがない。

カカオについてのイメージを調べるうちに、
自分の中での「カカオ」のイメージの定義がまったく定まらないことに気づいた。

緑色でやや長く、或いはオレンジ色で丸く、或いは茶色で小さく…。

AIが膨大なインターネットの海からカカオのイメージを拾い上げるような行為と同じ要領で、
自分も同じように遠い国のカカオとはどのようなイメージなのかを学習し、その境界を厳しく定めることなく広義に捉え、
我々の日常にチョコレートが存在するようにカカオのイメージも身近に存在することを定義する。

その行為は遠くの国で育ったカカオと自分との遠い距離を繋げるだろう。

松下穂香 / HONOKA MATSUSHITA
-------------------------------------------------*

*私の選んだチョコレート*
セレクト:バイべ・ラクテ BAHIBE LACTÉE 46%
グラン・クリュ(シングルオリジン) ドミニカ共和国産カカオ
フルーティな酸味と、力強くも繊細な苦み、持続するナッティーなアロマが特徴のミルク・チョコレート。
理由:この作品を見てカカオのことを想像するように、このチョコレートを食べ、原産国のことを想像しながら味わっていただきたい。

 

⑧BELOVED CHOCOLATE (インスタレーション)
*------------------------------------------------
遠ざけようとしているはずなのに、なぜかいつもチョコがわたしのそばに現れる。
その包装に宿りし悦びと困惑。予想とは裏腹に、制御不能な距離が新たな物語を紡いでゆく。
個人的にはチョコは苦手だ。が、それは世間に溢れ愛され貰われ、どういうわけか時折買ってしまうことさえある。

チョコは剥き出しではなく多くは箱入りだ。
それを封じ込めるプレゼントの箱は人が人との距離を縮ませたい時に手渡されていくメッセンジャー。

包まれ封じ込められた空間内でしか見ることのできない絵は、場合によっては圧迫や没入へと人を誘う。
そこでチョコと共存し巻き込まれていく。ただしその程度は、その人その人で異なる。
本作はこの、微妙でなんとも言えないその距離感で悦びと困惑をテーマとする。

何 川(ホ チュエン)/ HE CHUAN
-------------------------------------------------*

何川_2

*私の選んだチョコレート*
セレクト:インスピレーション・フレーズ /INSPIRATION FRAISE 
フルーツ・クーベルチュール 力強い刺激が感じられるストロベリーの味わいと、鮮やかなピンク色。
理由:一番好きな果物が苺。それが本来苦手なチョコレートと合わさり、曖昧さを生み出しているのが魅力。
またこの力強さが、プレゼントをもらった時の高揚感と似ていると感じる。